“腰痛”原因を捉え直す新常識 「筋肉・神経タイプ」(の健康 )
第3回は「筋肉・神経タイプ」の腰痛を取り上げます。立ち続けたり、歩き続けたりするとつらくなる腰痛は高齢者に多く、大きく2つのタイプに分けられます。筋肉タイプでは、歩行中に上半身が徐々に前方へ倒れ、トボトボ歩きになりやすいのが特徴です。一方、神経タイプでは立位や歩行時にお尻から脚にかけて痛みやしびれが生じますが、座ったり前かがみになったりすることで緩和されます。それぞれの特徴や見極め方、セルフケア法、改善のための体操を詳しく紹介します。
高齢者に多い「立ち続ける・歩き続けるとつらい腰痛」
腰痛の中でも特に高齢者に多く、健康寿命にも大きな影響を及ぼすのが、腰曲がりの原因にもなる「立ち続ける・歩き続けるとつらい腰痛」です。この症状は、筋肉が疲労困憊してしまう筋肉タイプと、神経が圧迫されて起こる神経タイプの2つに分類されます。ご自身の症状がどちらに当てはまるかを適切に見極めることが、改善に向けた重要な第一歩となります。
姿勢の崩れからくる筋肉タイプの腰痛
筋肉タイプの腰痛には、いわゆる腰曲がりや背中曲がりとして知られる成人脊柱変形が深く関係しています。これは加齢や長年の姿勢の悪さにより、本来垂直に立つべき骨盤が徐々に後ろ側へ傾くことから始まります。
骨盤が後方に傾くと重心のバランスが崩れるため、膝を軽く曲げて立つようになり、歩行時には上体が前へ傾いていきます。この前かがみの姿勢を維持しようと、背中の筋肉である脊柱起立筋が過剰に働き続けて上体を引き戻そうとします。この状態が続くと筋肉内の血流が滞り、酸素や栄養が不足して疲労性の筋肉痛が発生します。これがシニア層に多い筋肉タイプの腰痛のメカニズムです。
さらに前かがみの姿勢が慢性化すると、股関節のインナーマッスルである腸腰筋が縮んで硬くなります。その結果、歩幅が狭くなり、トボトボとした歩き方になるという悪循環に陥ってしまいます。
神経が圧迫される神経タイプの腰痛と脊柱管狭窄症
神経タイプの腰痛の代表格は腰部脊柱管狭窄症です。70代の約10人に1人が患っているとされる、高齢者には身近な疾患です。加齢による変化のほか、骨がずれる変性すべり症や、背骨が左右に曲がる変性側弯症などが原因で発症します。背骨内部の神経の通り道である「脊柱管」が狭くなり、神経が圧迫されることで痛みやしびれが生じます。
この疾患は背筋を伸ばすと組織が神経を圧迫して症状が出やすくなり、前かがみになると圧迫が和らぐという特徴があります。そのため、しばらく歩くと痛みが出て、休むと再び歩けるようになる神経性間欠跛行が見られます。周囲に歩行速度で追い越されることが増え、心理的な自己効力感の低下を招くことも少なくありません。
腰部脊柱管狭窄症の主な治療法
治療は薬物療法が一般的で、神経の血流を改善する薬や痛みを緩和する補助薬、ブロック注射などが行われます。特にお尻から脚の片側に症状が出る「神経根型」は、保存療法で改善しやすい傾向にあります。
ただし、変性すべり症や変性側弯症が背景にある場合は再発リスクが高いため、脳と神経が筋肉を適切に連動させるモーターコントロールを高める運動療法が非常に重要となります。
排尿障害など馬尾症状が見られる場合の注意点
神経タイプの腰痛の中でも、両脚のしびれや股間周りのほてり、尿漏れなどの排尿障害を伴う場合は、馬尾症状という深刻な神経障害が疑われます。放置すると感覚の鈍麻や深刻な運動機能低下を招き、手術による改善も難しくなるため、速やかに医療機関を受診してください。
神経タイプの腰痛に効果的な運動:ひざ抱えポーズ
脊柱管を広げて神経への圧迫を緩和するひざ抱えポーズ(脊柱管広げポーズ)がおすすめです。日々の隙間時間に無理のない範囲で継続しましょう。
↓神経タイプの腰痛に効果的な運動のやり方を動画でチェック!
筋肉タイプの腰痛に効果的な運動:ストレッチと筋トレ
筋肉タイプの方は前かがみ姿勢の影響で、胸郭や肩甲骨まわりが硬くなっています。これらをリセットするために、以下の運動を取り入れましょう。
- あおむけ平泳ぎ体操:胸郭を動かし、上体を反らしやすくするダイナミックストレッチです。
- 片脚ブリッジ:衰えがちな腹筋群を刺激し、歩行に重要なお尻の筋肉(臀筋群)を活性化させます。
↓筋肉タイプの腰痛に効果的な運動のやり方を動画でチェック!
腰痛以外に併存している可能性がある疾患
歩行がつらくなる世代では、他の疾患を併発しているケースがあります。以下の症状に心当たりがある場合は注意が必要です。
| 気になる症状 | 疑われる疾患・状態 |
|---|---|
| 階段を下りるのが怖い、手がしびれる | 頚髄症(首の脊髄の圧迫) |
| 喫煙習慣があり、歩くとふくらはぎが痛む | 末梢動脈疾患(脚の血管の動脈硬化) |
| 片方だけあぐらがかけない | 変形性股関節症 |
| 背骨が骨のようにつながり体が硬い(DISH) | 転倒による脊髄損傷のリスクに注意 |
これらの症状に不安を感じる場合は、自己判断せず、早めに専門の医療機関へ相談することをお勧めします。
当院での治療
当院では腰痛に対して下記の治療を行っています。
