筋ジストロフィーの治療薬 保険適用対象に 価格3億円余 中医協
全身の筋力が次第に衰えていく難病、筋ジストロフィーの治療薬「エレビジス」について、中医協=中央社会保険医療協議会は保険適用の対象とし、1回当たりの価格を3億円余りとすることを承認しました。国内で公的医療保険が適用されている薬の中で最も高額となります。
「エレビジス」は全身の筋肉が徐々に壊死(えし)し、心臓や呼吸器にも障害が出る難病「筋ジストロフィー」のうち「デュシェンヌ型」と呼ばれるタイプを対象とした治療薬です。
13日に開かれた中医協の総会で、厚生労働省は安全性が一定程度確保されたとして、公的医療保険の適用対象としたうえで1回当たりの価格を3億497万円余りとすることを提案し、承認されました。
これまで国内で保険が適用されている薬で最も高額だったのは、幼い子どもなどの全身の筋力が低下する難病「脊髄性筋萎縮症」の治療薬「ゾルゲンスマ」でおよそ1億6700万円でしたが、「エレビジス」はこれを大幅に上回り、最も高額となります。
厚生労働省によりますと、「エレビジス」の投与対象となる患者は3歳から8歳未満の子どもで、2026年度は37人の患者が見込まれるということです。
患者側の自己負担は、難病や子どもの医療費に対する国や自治体からの助成などによって低く抑えられるということです。
筋ジストロフィー治療薬「エレビジス」保険適用
患者さんの声と期待
筋ジストロフィーなどの患者や家族で作る「日本筋ジストロフィー協会」の竹田保代表理事は「きょうできることがあしたできなくなるという生活をしている中で、失われていく機能を少しでも維持できる薬が出てきて、治療の選択肢が増えたことは大きな希望だ」と話しています。
そのうえで薬の価格が3億円を超える高額となったことについて「患者会は薬価に関与する立場ではないが、公的な医療保険制度の中でどう位置づけられるかは重要な論点だと思う。製薬会社などには透明性のある説明をしてもらい、科学的な評価を踏まえて社会的に議論してもらいたい」と話していました。
専門家の見解
医療経済に詳しい東京大学大学院の五十嵐中特任准教授は、今回、保険適用の対象となったエレビジスが去年条件付きでの承認を受けていて、引き続き有効性が検証される必要があることを踏まえて、今の時点で高額な薬価が妥当かどうか判断するのは難しいとしています。
そのうえで「公的医療保険は社会全体で支えているものだ。エレビジスの有効性はまだ十分に示されていないからこそ、患者や周囲の家族に、実際どれぐらいのメリットがあるかについて、製薬会社側には社会にきちんと明らかにする責任があると思う」と話していました。
エレビジスとは
「エレビジス」は難病「筋ジストロフィー」のうち「デュシェンヌ型」と呼ばれるタイプを対象とした治療薬です。
このタイプの筋ジストロフィーは筋肉を形づくるたんぱく質の1つ「ジストロフィン」を作り出す遺伝子の変異が原因で発症しますが、この薬はその遺伝子が含まれた成分を点滴で投与して機能を補うとされています。
4歳から8歳未満の患者125人を対象に行われた国際的な治験の結果を分析したところ、この薬を投与したグループと、プラセボと呼ばれる偽の薬を投与したグループでは主要な評価項目となる運動機能を測るスコアに統計学的に意味のある差は示されませんでした。
ただ薬を投与されたグループでは筋肉の組織でジストロフィンが作られていること、床に座った状態から立ち上がるのにかかる時間が改善したことなどから、承認されました。
安全性については胃腸の障害などの副作用が報告されたということですが、この薬が直接の原因となる重い副作用は見られなかったとしています。
一方、海外で行われた臨床試験では歩けない状態の患者2人が急性肝不全で死亡したことが報告されていて、製薬会社は投与する場合の注意点を添付文書に追加するなどの対策をとったということです。
この薬をめぐっては、アメリカFDA=食品医薬品局が承認する一方、EU=ヨーロッパ連合の規制当局は有効性の根拠が不十分だとして承認を見送るなど対応が分かれています。
なぜエレビジスは高額なのか?
今回のエレビジスのような遺伝子治療薬や、再生医療製品は高額になる傾向があります。
理由としては
| 個別化の必要性 | 患者自身の細胞を採取して専用の施設で培養や加工を行うなど |
|---|---|
| 特許料 | 関連する特許も多く、その使用料が高額になる |
があげられます。
さらに、高度な技術や人材、専用の製造設備が必要なため、薬の大量生産が難しいうえ、対象が難病や希少疾患で患者数は少ないことなどから、一般的な医薬品と比べて高額なコストがかかるとされています。
薬価の決まり方
こうした薬の価格は、どのように決まるのでしょうか。
保険が適用される医薬品の価格=薬価は国が定めていて、原材料費や製造の際の経費を積み上げたり、ほかに効能が似た薬の価格と比較したりするなどして算定されています。
現在、保険が適用されている薬で最も高いのは、1回の使用で
| ゾルゲンスマ | 全身の筋力が低下する「脊髄性筋萎縮症」の治療薬:1億6700万円余り |
|---|---|
| ルクスターナ | 目の「遺伝性網膜ジストロフィー」の治療薬:およそ4960万円 |
| ブレヤンジ | 血液がんを対象に使われる薬:3500万円余り |
などとなっています。
こうした薬を使う場合の患者にかかる負担は、ひと月当たりの医療費の自己負担に上限が設けられている「高額療養費制度」で抑えられるなど、軽減措置がとられています。
一方で、残りの費用は、保険料などでまかなわれるため、高額な医薬品が保険財政に影響を及ぼす可能性も指摘されています。
当院での対応
当院では筋ジストロフィーに対してAWG療法(自費)を行っています。
