睡眠の悩み 「不眠症 薬の正しい使い方」(きょうの健康)
薬局で販売されている「睡眠改善薬」は、鼻炎薬などの副作用である眠気を利用した一時的な対症療法に過ぎません。2週間以上不眠の状態が続く場合や、日中の生活に支障がある場合は、医療機関を受診してください。不眠症で処方される薬は主に4タイプに分類されます。以前は脳の機能を低下させて眠りを誘う薬が中心でしたが、依存性が課題でした。最近は副作用の少ない新薬が登場し、安全な薬への切り替えが進んでいます。
不眠症とは?夜間と日中の症状が続く状態
睡眠に関する悩みの中で、寝つくのに時間がかかる、途中で目が覚めるといった「夜間の症状」と、日中の眠気などの「日中の症状」の両方が長期間続いている状態を不眠症といいます。国内では10人に1人が不眠症であるという報告もあり、決して珍しい病気ではありません。
不眠が長く続くと、「また今夜も眠れないのではないか」という不安や緊張が強まり、寝室に入ること自体に恐怖を感じるようになります。睡眠時間を確保しようとして寝床で長く過ごしすぎると、かえって眠りが浅くなる悪循環に陥ります。また、不眠はうつ病の初期症状であったり、不眠が原因でうつ病を発症したりすることもあるため注意が必要です。
不眠症が起こりやすくなる要因と背景
不眠症は加齢に伴って増加する傾向にあります。高齢になると自然に眠りが浅くなり、朝早く目が覚める早期覚醒が増えることが一因です。また、眠れないために無理に寝床にいる「床上時間」を長く取ってしまうことが、さらに不眠を悪化させる原因となります。
高齢者の不眠の背景には、以下のような病気や薬の影響が隠れていることもあります。
| 身体的な要因 | 高血圧、糖尿病、夜間頻尿、睡眠時無呼吸症候群、レム睡眠行動障害など |
|---|---|
| 薬の副作用 | 一部の降圧薬、ステロイド薬などの影響 |
| その他の要因 | 更年期障害(のぼせ・発汗)、慢性的なストレス、過度な飲酒 |
不眠症の可能性をセルフチェック
自分が不眠症の疑いがあるかどうか、以下の項目で目安をチェックしてみましょう。夜間の症状と日中の症状の両方で、それぞれ1つでも当てはまる項目がありますか?
夜間の症状チェック
- 寝床に就いてから眠るまで時間がかかる
- 夜間、睡眠の途中で目が覚める
- 予定していた時刻より早く目覚めて、それ以降眠れない
日中の症状チェック
- 気分が落ち込んでいる
- 仕事や家事、学業などの活動状態が低下した(倦怠感、集中力の低下、頭重感など)
- 日中に強い眠気を感じることがある
これらの症状が週3回以上の頻度で長期間続いている場合、不眠症の可能性があります。睡眠外来や不眠外来、または精神科・心療内科を受診することが推奨されます。
不眠症の診断と治療の流れ
受診時には、睡眠に関することだけでなく、体調の変化をすべて医師に伝えましょう。不眠とは無関係に見える症状が、原因の特定に役立つことがあります。もし原因となる病気が見つかれば、その治療を優先することで、不眠の症状が改善される可能性が十分にあります。
原因疾患の治療後も不眠が残る場合や、特定の原因がない場合は、生活習慣の改善や寝室環境の見直しから治療を始めていきます。
市販の睡眠改善薬と処方薬の違い
市販の「睡眠改善薬」は、抗ヒスタミン薬の副作用を利用したもので、医療機関で処方される睡眠薬(不眠症治療薬)とは仕組みが異なります。市販薬を自己判断で使い続けると、耐性ができて効果が薄れたり、副作用が出たりするリスクがあります。不眠が続く場合は市販薬に頼りすぎず、専門医の診察を受けることが大切です。
医療機関で処方される主な睡眠薬の種類
生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合、睡眠薬が処方されます。現在は主に以下の4つのタイプが使われています。
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
脳の興奮を抑える神経伝達物質「GABA」に働きかけ、脳を休ませることで眠りを誘う薬です。以前から広く使われてきましたが、日中のふらつきや記憶障害、依存性のリスクが課題となっています。特に高齢者では、認知機能への影響にも注意が必要です。
メラトニン受容体作動薬
体内時計のリズムを整えるホルモン「メラトニン」に働きかけ、自然な眠りを促します。依存性がほとんどないのが特徴で、体内時計が乱れやすい高齢者や交代制勤務の方に適しています。数日から数週間かけて睡眠のリズムを整えていく薬です。
オレキシン受容体拮抗薬
脳の「覚醒状態」を維持するオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態へと導く薬です。寝つきの悪さや中途覚醒の両方に効果があり、依存性が低いのが大きなメリットです。即効性もあり副作用が少ないため、現在では新たに治療を始める方の多くに処方されています。
治療のゴールは「薬を使わずに眠れること」
不眠症治療の最終的な目標は、薬を使わずに眠れるようになることです。長期間睡眠薬を服用している方は、現在の薬をいつまで続けるべきか、減らしていくことは可能か、ぜひ担当医に相談してみてください。専門医と協力しながら、健やかな睡眠を取り戻しましょう。
当院での治療
当院では不眠症に対して、AWG療法(自費)を行っています。
