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“動脈の異変”〜命を守る血管の新常識〜 「大動脈解離」(きょうの健康)

[2026.04.04]

大動脈解離とは、大動脈の血管壁が裂けることで、胸や背中などに今まで経験したことのないような激痛が走る病気です。大動脈とは心臓から直接出ている幹線道路のような血管で、直径が2.5cmから3.0cmにも及びます。大動脈解離は命に関わる極めて危険な状態で、発症と同時に命のカウントダウンが始まるといっても過言ではありません。ここでは大動脈の解離が起こる仕組みや分類、日常生活でできる予防策、最新の治療法について詳しく解説します。

命のタイムリミットが迫る大動脈解離の脅威

ある日突然、強烈な激痛とともに命の危機が訪れる恐ろしい病気、大動脈解離が増え続けています。大動脈の中でも心臓に近い場所でこの異変が起これば、発症から1時間経過するごとに死亡率は1%ずつ上昇するといわれています。さらに、48時間以内には半数の方が亡くなってしまうというデータもあります。この「命のタイムリミット」に打ち勝ち、大切な命を守るための知識を身につけることが重要です。

全身へ血液を送る幹線道路である大動脈の構造

大動脈は、私たちの体の中で酸素や栄養を含んだ血液を全身の組織や臓器へ届ける、いわば幹線道路のような役割を果たしています。心臓から直接つながるこの血管は、直径が約2.5〜3cmほどある非常に太い管です。

大動脈の血管壁は、以下の三層構造で成り立っています。

  • 内膜(ないまく):最も内側にある層
  • 中膜(ちゅうまく):真ん中にある厚い層
  • 外膜(がいまく):最も外側にある層

通常、血液はこの内側の空洞(内腔)をスムーズに流れています。

血管の壁が裂ける解離が起こるメカニズム

心臓は1日に約10万回もの拍動を繰り返し、強い圧力で血液を送り出しています。その圧力を最も強く受け止めている大動脈で、血管の壁が裂けてしまうのが大動脈解離です。その発生プロセスは以下の通りです。

  1. 内膜に亀裂が生じる
    何らかの原因によって、血管の最も内側にある内膜に亀裂が入ります。
  2. 中膜へ血液が流れ込む
    亀裂から強い圧力のかかった血液が、本来の通り道ではない中膜の中へ猛烈な勢いで流れ込みます。
  3. 偽腔が形成される
    血液の力によって中膜が剥がされ、本来の通り道である真腔のほかに、偽腔(ぎくう)と呼ばれる二重の通り道ができてしまいます。

一度裂け始めるとドミノ倒しのように亀裂が連鎖していき、いつ大動脈が破裂してもおかしくない極めて危険な状態に陥ります。

大動脈解離の患者数が増加している背景

大動脈解離と大動脈瘤を合わせた年間死亡者数は、20年前の約2倍に増加し、年間2万人を超えています。この背景には、高齢化に伴いリスク因子である高血圧を抱える人が増えたことが挙げられます。高い血圧によって血管壁に強いストレスがかかり続けることが、解離の直接的な引き金となるのです。

また、CT検査などの医療技術の進歩により、以前は原因不明の突然死とされていたケースが正確に大動脈解離と診断されるようになったことも、症例数増加の要因といえます。

過去に経験したことがない激痛と痛みの移動

大動脈解離の最大の特徴は、前触れのない激痛です。この痛みは血管の外側にある外膜が内側から無理やり引き伸ばされ、周囲の知覚神経が刺激されることで生じます。多くの患者がナイフで切り裂かれるような痛みと表現するほどの衝撃です。

また、痛みの移動という特徴もあります。これは血圧によって血管の裂け目が心臓側から足の方向へと連続的に広がっていくために起こります。胸から背中、さらにお腹や足へと痛みが移り変わるのです。ただし、この移動を自覚できるのは全体の約2割程度とされています。

一時的に痛みが和らぐケースとその後の危険性

Aさんの事例では、トイレでいきんだ瞬間に胸に激痛が走りましたが、しばらくすると痛みが落ち着きました。しかし、その12時間後に再び激痛に襲われ、意識不明の重体となりました。このように、一時的に痛みが和らぐことがあります。これは偽腔の中で血液が固まったり、血液が真腔へ戻ることで圧力が下がったりした際に起こります。

しかし、痛みが引いたとしても命の危険が去ったわけではありません。水面下で病状は進行しており、決して油断してはいけない状態なのです。

治療方針を左右するA型解離とB型解離の違い

大動脈解離は、裂ける場所によって2つのタイプに分類されます。

A型解離 心臓に近い上行大動脈に解離があるタイプ。極めて危険で、直ちに緊急手術が必要です。
B型解離 それ以外の場所で起こるタイプ。破裂などの緊急事態がなければ、まずは血圧を下げる薬と安静による内科的治療が行われます。

死因の多くを占める心タンポナーデの恐ろしさ

大動脈解離の主な死因は、大出血よりも心タンポナーデによるものが多いのが実情です。心臓を包む心膜腔というスペースに、解離した血管壁から染み出した血液が溜まることで、心臓が外側から圧迫されます。心臓が十分に動けなくなるこの状態は非常に危険で、痛みが和らいでいる間にもじわじわと進行している可能性があります。

命を救うための2つの最新手術法

適切な対処が行われ、手術が間に合えば9割以上の方を救命することが可能です。主な手術法には以下の2つがあります。

人工血管置換術 脆くなった大動脈の一部を取り除き、人工血管に置き換える根本的な治療です。体への負担は大きいですが、再発リスクを抑えられます。
ステントグラフト内挿術 カテーテルを使い、血管の内側からバネ付きの人工血管で補強する治療です。小さな切開で済むため、高齢の方にも適しています。

迅速な診断のために医師へ伝えるべき重要事項

救急車を呼んだ際や病院に到着した際、正確な診断のために以下の情報を伝えることが、救命率を上げるための鍵となります。

突然の激痛の有無 何の前触れもなく、これまでに経験したことがない強烈な痛みが始まったかどうか。
痛みの移動 胸から背中、お腹などへと痛みが動いた感覚があったかどうか。
家族歴 近い親族に大動脈解離や血管の病気にかかった人がいるかどうか。
リスク因子 高血圧、糖尿病、喫煙習慣、睡眠時無呼吸症候群などの持病があるかどうか。

日常生活で取り組める大動脈解離の予防策

最大の予防策は血圧の管理です。特に急激な血圧変動を避けるため、冬場の寒暖差には十分に注意してください。トイレや浴室を暖めておく、外出時の防寒を徹底するといった工夫が有効です。また、トイレで強くいきまない、重い荷物を急に持ち上げないなど、日常生活の何気ない動作で血圧を急上昇させないことが大切です。

専門医からのメッセージ 

大動脈解離はある日突然、平穏な日常を奪い去ります。発症した方の多くは、もっと早く救急車を呼んでいればと後悔されます。しかし、この病気の怖さを知っていれば、迷わず助けを求めることができるはずです。激痛を感じたその瞬間に、一切の迷いを捨てて救命のための行動を起こすことが、あなたの大切な命を守ることにつながります。

当院での治療

当院では動脈疾患に対してAWG療法(自費)を行っています。

AWG療法

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