メンタル不調 最新治療 「不快な考えや行為をやめられない 強迫症」(きょうの健康)
強迫症は、頭の中にしつこく浮かぶ不快な考えやイメージ(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消そうとする繰り返しの行為(強迫行為)が止められず、日常生活に大きな支障が出る病気です。その考えや行為が過剰であること、生活に悪影響を及ぼしていることを自覚していても、自分ではやめられず、心身が激しく疲労します。以前は治療法が確立されていない時代もありましたが、現在は治療の指針が整っており、適切な治療で症状の改善が期待できるようになっています。
強迫症とは:不快な考えや行為が止まらない原因と症状
自分の意思に反して不快な考えがしつこく頭に浮かんできてしまい、強い不安や恐怖を感じる。そして、その不安を打ち消そうとする行為を過剰に繰り返してしまう。こうした症状が続くことによって日常生活に支障が出る病気が強迫症です。
強迫症はこれまで、慢性化したり重症化する一方の病気と思われていました。しかし最近では、適切な治療を受けることで、症状を改善させることが期待できるようになっています。強迫症になる人は100人に1~2人の割合といわれ、決して珍しい病気ではありません。発症年齢は比較的若く、20代前半で発症することが多いのが特徴です。また統計では、女性は男性の2倍なりやすいと言われています。(出典:強迫症の診療ガイドライン)
強迫症になると、身の回りの汚れを極端に気にしたり、鍵の閉め忘れで泥棒に入られるのではないか、コンセントの挿しっぱなしで火事になるのではないか、といった極端な不安(強迫観念)に振り回されます。その不安を打ち消そうとして、手洗いや確認作業を過剰に繰り返す(強迫行為)が、なかなかやめられなくなってしまいます。強迫観念と強迫行為の2つが組み合わさることで、強迫症の症状が現れるのです。
強迫症を抱える人は、自分が繰り返し行っている過剰な確認や手洗いが、極端な考え方であることや、普通ではないことを頭ではよく理解しています。しかし、その不快な考えや行為を自分の力でコントロールすることができなくなってしまいます。そのため、本人は深刻なつらさを抱えることになります。
強迫症の具体的な事例:確認強迫に悩むAさんのケース
20代の男性・Aさんは、外出しようとドアの鍵を閉めたあと、すぐに出かけることができず、ドアノブを何度もガチャガチャと回して確認してしまいます。閉めたと思っても、いや、閉まっていないんじゃないか?という疑念が次々と湧いてくるのです。
電気が消えているかを確認するためにスイッチを何度もつけ外ししたり、窓の戸締まりや冷蔵庫が閉まっているかを何度も確認しないと落ち着きません。入浴時や洗面所でも、水が止まっているかが不安になり、何度も戻って確認を繰り返してしまいます。このようにAさんは日々の生活の中で確認作業に振り回され、多大な時間を浪費してしまうことに強い苦痛を感じていました。
強迫症の主なタイプと特徴
強迫症には、Aさんのような「確認強迫」以外にも、さまざまなタイプが存在します。代表的なものは以下の通りです。
| 不潔恐怖と洗浄強迫 | 何かに触れるだけで不潔だと感じ、不安を打ち消すために過剰な手洗いや消毒を繰り返す。強迫症の中で最も多いタイプ。 |
|---|---|
| 加害恐怖 | 「誰かを傷つけたのではないか」という不安にとらわれ、現場に戻って確認したり、ニュースを過剰にチェックしたりする。 |
| 不完全恐怖・完全強迫 | 計算が正確かどうか、間違いがないかが気になって何度もやり直さないと気が済まない。 |
| 対称性・整頓強迫 | 物の位置や置き方に異常なこだわりがあり、左右対称でないと不安になったり、何度も並べ直したりする。 |
症状が進むと、確認作業を避けるために外出そのものを止める回避行動や、家族に確認を強要する巻き込みに発展することもあります。これにより、本人だけでなく周囲の人の生活にも支障をきたすことになります。
強迫行為の悪循環:一時的な安心が依存を招く
強迫症の人は、強迫観念による強い不安を打ち消すために強迫行為を行い、一時的な安心を得ようとします。しかし、この安心は極めて短時間しか持続せず、すぐにまた不安が襲ってきます。これを繰り返すうちに悪循環に陥り、不安が小さくても強迫行為をせずにはいられなくなります。この状態は強迫行為による安心は麻薬のようなものと例えられることもあります。
強迫症の原因:脳内のシステムエラーとセロトニン
強迫症は、性格の問題だけではなく、脳の働きや機能の不調が深く関連しています。脳内の神経回路にシステムエラーが起きている状態と考えられています。
| 前頭前野 | 危険を予測する役割。ここが過剰に活動すると、本来は不要な心配が増えてしまう。 |
|---|---|
| 線条体 | 習慣行動を制御する役割。ここに問題が起きると、強迫行為を止めることができなくなる。 |
| 視床(ししょう) | 感覚情報のフィルター。異常があると、不要な刺激に対しても過剰に反応してしまう。 |
これらの回路には、精神を安定させるセロトニンが深く関わっています。セロトニンの機能が低下することが、強迫症の引き金になると考えられています。
強迫症の治療方法:薬物療法と精神療法の組み合わせ
強迫症の治療では、脳の状態を整えることが重要です。薬物療法と精神療法の2つを組み合わせて行うことが、最も効果的とされています。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)による薬物療法
まずはつらい症状を抑えるため、薬物療法から始めます。セロトニンの異常に対応するため、SSRIと呼ばれる抗うつ薬を使用します。効果の判定には8~12週間ほど継続して服用する必要があります。主な副作用には、吐き気などの消化器症状や眠気などがあります。
認知行動療法:曝露反応妨害法(ERP)
精神療法として行われるのが、曝露反応妨害法(ERP)です。これは脳の過剰な反応を適切に上書きするための治療です。具体的なステップは以下の通りです。
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曝露(ばくろ)の実践
自分が苦手な状況や不安を感じる状況(鍵を閉めたまま確認せず外出するなど)にあえて立ち向かいます。 -
反応妨害の実行
不安を打ち消すために行っていた強迫行為(家に戻って確認する、何度も手を洗うなど)を、あえて行わずに我慢します。 -
不安の慣れを体験する
不安なままでも一定時間を過ごすことで、脳に「何もしなくても大丈夫だ」という感覚を学習させます。
回復へのポイント:不安と向き合う時間と注意点
強迫行為を我慢して数時間過ごすと、一度は高くなった不安も、時間がたてば必ず自然に下がっていくことを実感できるようになります。脳が「放っておいても大丈夫だ」と学習するには時間がかかるため、粘り強く取り組むことが大切です。
また、注意すべき点としてメンタルチェッキングがあります。実際に確認行為をしなくても、頭の中で「あの時こうやったから大丈夫だ」と思い返して安心しようとすることは、回復を妨げるNG行為です。施錠の瞬間をじーっと見つめて安心しようとする行為も同様に避けましょう。
専門家からのメッセージ
強迫症は、分かってはいるけどやめられないという、非常に過酷な病気です。過剰な確認作業に悩み、日常の貴重な時間を費やしすぎていると感じたら、それは脳が発しているサインかもしれません。自分自身で取り組み方を学び、積極的に実践していくことも大切ですが、一人で抱え込まず、なるべく早く専門医に相談してください。適切な治療によって、穏やかな日常を取り戻すことは十分に可能です。
当院での治療
当院では強迫症に対してAWG療法(自費)を行っています。
