まさかわたしが心不全? 「早期発見!セルフチェックと 対処法」(きょうの健康)
心不全は誰にでも発症する可能性があります。
日頃から血圧を管理し、食事や運動に取り組むなど生活習慣の改善が大切です。
すでに高血圧、糖尿病、慢性腎臓病などの生活習慣病がある場合は発症リスクが高いので要注意です。
息切れ、むくみ、食欲低下などは心不全の初期症状ですが、こうした症状が出ていなくても心筋梗塞などの心臓病があれば、血液検査で心不全になっていないか確認をすることも大事です。
心不全を発症後は、薬を中心とした治療で進行を抑えます。
心不全とは
息切れ、むくみ、食欲不振。こうした症状に心当たりがある人は、もしかすると「心不全」かもしれません。
心不全には“急に亡くなる病気”といったイメージを持つ人も多いかもしれませんが、それだけではなく、十年以上にわたって徐々に進行していく病気でもあります。
心不全は、加齢や生活習慣が原因で発症することが多く、超高齢社会の日本では、患者数が年々増加しています。国内の患者数は2030年に130万人に上ると推計されている、身近な病気なのです。
いったん心不全を発症すると、完全に治すことは難しいため、症状が軽いうちに、あるいは、症状が出る前から、対策や予防に取り組むことが大切です。
心不全とは、「心臓の機能が低下して血流が悪くなり、全身にさまざまな症状が出ている状態」を指します。
心臓はポンプのように拡張と収縮を繰り返し、健康な成人の場合、安静時は1分間に4~8Lの血液を全身に送り出しています。
ところが、心臓の機能が低下すると、送り出す血液の量が減り、全身の血流が悪くなります。
すると、血液が停滞する「うっ血」や、血液が行き届かない「虚血」が、体のさまざまな部位で起こります。
この「うっ血」と「虚血」が多くの症状を引き起こします。
心不全の症状
心不全の「初期症状」としては、「息切れ」「手足のむくみ」「食欲低下」などが挙げられます。
これらの症状は、血液が停滞する「うっ血」によって起こります。
- 「息切れ」は「肺のうっ血」が原因です。「半年前、1年前に上れた坂道が、息が切れて上れない」「同じ年ごろの人と比べて、歩行速度が遅い」といった人は、心不全の疑いがあります。
- 「手足のむくみ」は「手足のうっ血」が原因です。「すねを指で押すと跡がのこる」「朝からむくんでいる」「体重の増加を伴うむくみがある」といった場合は、注意が必要です。
- 「食欲低下」は胃や腸など「消化管のうっ血」が原因です。「食べるとお腹が張り、たくさんの量を食べられない」と訴える人が、心不全の患者には多い傾向があります。
上記の症状が気になる場合は、循環器内科の受診をおすすめします。
心不全が進行すると、「倦怠感・疲れやすさ」「手足の冷え」などの症状が現れます。
これらは、血液が行き届かない「虚血」によって起こります。
さらに進行すると、「安静時の息切れ」「夜間のせき」「横になると息苦しく、上体をおこすと楽になる」といった症状が現れます。これらは「肺うっ血」が進行して「重症」になった状態です。命に関わるため、速やかな治療が必要です。すぐに受診してください!
心不全の症状は、「よくある症状」「年のせい」などと見過ごされ、受診につながらないケースも多くあります。
しかし、症状が現れたときには、すでに心不全が進行しています。
そのため、できればこうした症状を起こさないように、予防に取り組むことが重要です。
心不全のステージと経過
心不全はステージA~Dの4段階に分類されます。
実は、「息切れ」「むくみ」などの症状が現れた時には、すでに「ステージC」に進んでいるのです。
ステージA
高血圧や糖尿病、肥満などのいわゆる「生活習慣病」がある段階です。
これらの病気によって、心臓に負担がかかっています。
たとえば「高血圧」が続くと心臓に負担がかかり、心臓の筋肉が分厚くなります。
分厚くなった心臓の筋肉は硬くなり、ポンプ機能が低下するため、心不全につながります。
「糖尿病」で血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つき動脈硬化を引き起こします。
心臓の血管に動脈硬化がおこると「心筋梗塞」となり、心不全につながる場合があります。
ステージB
心筋梗塞や弁膜症などの心臓病を発症した段階です。
ステージAと同じく心不全の症状はまだありませんが、さらに心臓に負担がかかっています。
この段階では、BNPというホルモンが心臓から多く出ています。
値が高いほど、心臓に負担がかかっていて、心不全が重症であることを示します。
BNPの値は血液検査で簡単に調べることができます。
ステージC
息切れ・むくみなどの症状が現れ、心不全を発症した段階です。
治療によって症状は改善し、心臓の機能も回復しますが、症状が再度出現すると、さらに心臓の機能が低下します。
改善と悪化のアップダウンを繰り返し、右肩下がりに心臓の機能が低下していきます。
「急性心不全」で急激に機能が低下したり、「突然死」を起こしたりすることもあります。
ステージD
心不全がさらに進み、さまざまな治療をしても重度の心不全症状が出る段階です。
ゆくゆくは命に関わります。
心不全の予防
ステージA・Bは十年単位で時間をかけて進行しますが、ステージCになると進行のスピードが早くなり、数か月~数年でステージDに移行し、命に関わる場合もあります。
また、ステージは一方通行で、一度発症すると心不全が完治することはありません。
心臓の筋肉をつくる心筋細胞は、皮膚やほかの臓器などの細胞とちがって生まれ変わることがほとんどないので、ダメージを受けると元に戻らないためです。
そのため、ステージA・Bの段階で気づき、早く予防をするに越したことはありません。
予防に取り組むことで、心不全の進行をおさえることができます。
ステージA(生活習慣病)の人への予防策
可能であれば、ステージAになる前から予防に努めましょう。
特に「高血圧対策」が重要です。
- 血圧測定
朝と晩など、決まった時間に血圧測定を行い、自分の血圧を正確に知っておきましょう。年齢を問わず、家庭血圧では「125/75mmHg未満」、診察室血圧では「130/80mmHg未満」を維持することが、心不全の発症予防につながります - 食生活
だし・酸味・香辛料を活用し、減塩を心がけましょう。また「DASH(ダッシュ)食」と呼ばれる、野菜・果物・低脂肪乳製品が豊富な食事は、心不全の予防に効果的です。 - 運動
有酸素運動を行いましょう。週に150分程度のウォーキングを続けることで、心不全リスクが10%低下することが分かっています。運動は、血圧だけでなく血糖値やLDLコレステロール値の改善にもつながり、生活習慣病全般の予防に有効です。
生活習慣病を発症したら、その治療を行い、次のステージへ進行しないようにしましょう。
また、生活習慣の改善も引き続き重要です。
例えば高血圧の方は、食塩摂取量を6g未満にするなど、より厳格な管理が必要になります。
ステージB(心臓病)の人への予防策
持病の治療を行い、次のステージへ進行しないようにしましょう。
また、循環器内科で血液検査を行い、BNPを測定することをおすすめします。
心不全の重症度が分かり、治療の目安となります。
心不全の治療
ステージC・D(心不全)の人の治療
心不全の治療は、薬物療法が中心になります。
大きく分けて3つのタイプの薬を用います。
- 病気の進行を抑える薬
SGLT2阻害薬・ARNI・β遮断薬・MRAは、心不全の4大治療薬です。心臓の負担を減らし、心臓を保護する作用があります。 - 心不全の原因を治療する薬
心不全を引き起こしている原因が明らかな場合は、その原因に対する治療を行います。例えば高血圧の場合、降圧薬を用いて厳格な降圧を行うことがあります。 - 症状を和らげる薬
むくみがある場合には利尿薬など、症状に合わせた薬が処方されます。
専門医からのメッセージ
心不全のステージは一方通行で、傷ついた心臓を元の状態に戻すことは非常に難しいため、予防が何より重要です。
しかし、発症してしまっても、生活習慣の改善や適切な治療によって進行を抑え、予後を大きく改善することができます。
休みなく働いている心臓を、少しでもいたわる気持ちで、ご自身にできることから始めてほしいです。
当院での対応
当院では心不全に対して、AWG療法(自費)を行っています。
