「認知症」自分らしく生きていくための備えSP(あしたが変わるトリセツショー)
認知症は「何もわからなくなる」といったマイナスなイメージを持たれがちですが、実際にはできることややりたいことを持ちながら、自分らしく生活している方がたくさんいらっしゃいます。適切な知識を持ち、周囲がサポートすることで、認知症になっても豊かな人生を送り続けることが可能です。
認知症の新しい常識と自分らしく生きる「新しい認知症観」
街頭アンケートでは、認知症に対して「怖い」「絶望」といったネガティブな印象を持つ声が多く聞かれます。しかし、過度な不安は受診を遅らせ、社会的孤立を招く原因となります。
実際の認知症当事者である「先輩たち」は、人によって症状は異なり、工夫次第で仕事や趣味を継続できると語っています。仲間との出会いや周囲の理解があれば、前向きにやりたいことに挑戦できるのです。このように、認知症になっても自分らしく生きる考え方を新しい認知症観と呼びます。
共生社会の実現に向けた社会の取り組み
2024年には認知症基本法が施行され、誰もが尊厳を持って暮らせる社会づくりが進んでいます。和歌山県御坊市の事例では、認知症の方の声を反映し、銭湯のボトルに「からだ」「あたま」と大きく表記したり、郵便局のマークを巨大化させたりといった、生活しやすいまちづくりが始まっています。
脳の仕組みから見る「できること」の秘密
認知症で「できること」が残る理由は脳の構造にあります。脳の細胞がダメージを受けると情報は伝わりにくくなりますが、その影響が出る場所は人それぞれです。
記憶を司る部位が傷つけばもの忘れが出ますが、視覚や感情を司る部位が無事であれば、その機能は保たれます。つまり、ダメージが少ない部位の機能は維持されているため、すべての能力が失われるわけではありません。
認知症の原因となる主な病気
認知症は一つの病名ではなく、脳の働きに支障が出ている状態を指します。その原因となる病気は70種類以上にのぼります。
| 原因となる病気 | 割合 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| アルツハイマー病 | 68% | 主な症状はもの忘れなど |
| 血管性認知症 | 11% | 脳梗塞や脳出血の場所により症状が異なる |
| 混合型 | 6% | 複数の原因が合わさったもの |
| レビー小体型認知症 | 5% | 幻視や手の震えなどが現れることがある |
| 不明 | 8% | 原因が特定しきれないもの |
| その他 | 2% | 稀な疾患など |
認知症の進行と感情の豊かさ
認知症は軽度認知障害(MCI)という前段階を経て、徐々に進行します。進行のスピードには個人差がありますが、症状が重くなっても「楽しい」「うれしい」といった感情は最後まで残ります。本人が楽しいと思える活動を続けることが、生活の質を高める鍵となります。
進行段階ごとの目安
- 軽度:約束を忘れる、同じ話を繰り返す、日時の混乱、計画立案の困難
- 中等度:一人での外出が困難、季節に合わせた着替えができない、生活に支障が強まる
- 重度:入浴やトイレを嫌がる、言葉や表情が少なくなる、意欲の大幅な低下
怒りや徘徊などの「周辺症状」に隠された理由
認知症の症状は、脳の機能低下による中核症状と、そこから派生する周辺症状(BPSD)に分けられます。
| 中核症状 | 記憶障害、見当識障害(時間・場所の混乱)、段取りができない等 |
|---|---|
| 周辺症状 | 不安、抑うつ、攻撃的行動、徘徊、妄想、睡眠障害等 |
周辺症状には理由がある場合が多いです。たとえば、視野が狭くなったり色のコントラストが判別しにくくなったりする視覚の変化により、段差が深い底に見えて恐怖を感じることがあります。また、徘徊も「家族のために買い物に行こうとした」という愛情が動機であることも少なくありません。
症状が進んでも自尊心は残っているため、子ども扱いはせず、人生の先輩として敬意を持って接することが重要です。
困ったときの相談窓口一覧
「認知症かもしれない」と感じたときや、生活に困ったときは、早めに専門機関へ相談しましょう。
| 地域包括支援センター | 生活全般の相談、介護保険の申請、地域活動の紹介など |
|---|---|
| 認知症疾患医療センター | 専門的な医療相談、鑑別診断、治療方針の決定など |
| 若年性認知症コールセンター | 65歳未満で発症した方の専用窓口(電話:0800-100-2707) |
「わたしのトリセツシート」でできることを引き出す
本人の「できること」や「やりたいこと」を可視化するツールとしてわたしのトリセツシートの活用が有効です。これにより、本人の意欲を引き出し、家族の介護負担を軽減する効果が期待できます。
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現状のチェック
日常の生活行為や趣味について、今「している」ことと「好き・したい」ことに印を付けます。 -
工夫の検討
「している」に印はないが「好き・したい」に印がある項目について、どうすれば継続できるか方法を考えます。 -
認識の擦り合わせ
本人と周囲で認識がズレている場合、本人の自立心や希望を最優先に尊重した支援方法を話し合います。
チェック項目の例
シートでは、以下のような多角的な視点で本人の生活を振り返ります。
- 生活行為:身だしなみ、料理、買い物、掃除、ペットの世話、おしゃべり、地域活動
- 趣味・娯楽:読書、書道、音楽、楽器、囲碁・将棋、スポーツ観戦、畑仕事、旅行
当院での治療
当院では認知症に対して、AWG療法(自費)を行っています。
